恵信尼さんの最後のお手紙原文 901
恵信尼さんが王御前(後の覚信尼)さんに送った最後のお手紙に
なってしまったと思われる文面抜粋です。(10通目)
「《裏端書》
わかさとの
〈文永5年1268年〉三月十二日 ゐ(亥)の時
あま(余)りにくら(暗)く候ていかようにか(書)き候はし
たより(便)をよろこ(喜)ひて申候う さてはことし(今年)まて
あるべしと思わず候つれとも ことし(今年)は
八十七やらんむなりになり候 とら(寅)のとし(年)のものにて
候へは八十七やらん八やらむになり候へは
いま(今)は時日をま(待)ちてこそ候へとも
とし(歳)こそおそ(恐)ろしく(敷)なりて候へども
しわふ(咳)く事候はねは つわき(唾)なとは◯事候わす
こしひさ(腰膝)う(打)たすると申◯ともたふしまては候わず
ただいぬ(犬)のよう(様)にてこそ候えとも
ことし(今年)になり候へばあまりにものわす(物忘)れをし候て
ほれ(放心)たるやうにこそ候へ 略
またきんたち(公達)の事 よにゆか(懐)しくうけ給わはりたく候也
よ(余)のきんたち(公達)の御事もよにうけ給りたくおほ(覚)江候
あはれこのよ(世)にていま(今)いちと(一度)み(見)まいらせ
又みへまいらする事候べき わか身はこくらく(極楽)へたた(唯)
いま(今)にまい(参)り候はむすれ なに事もくらからす
み(観)そなはしまいらすべく候へばかま(構)へて御念佛申させ給て
こくらく(極楽)へまい(参)りあはせ給へし なほなほこくらく(極楽)へ
まい(参)りあひまい(参)らせ候はんすれはなにこと(何事)も
くら(暗)からすこそ候はんずれ 略
なにをも申したき事おほ(覚)へ候へとも
あか月たより(便)の候よし申候へは
よる(夜)かき候へは くら(暗)く候てよもこらん(御覧)しへ(得)
はしじとてとと(止)め候ぬ 又はり(針)すこした(賜)ひ候へ
このひん(便)にでも候へ 御ふみ(文)の中にいれてた(賜)ふへく候
なほなほきんたち(公達)の御事 こま(細)かにおほせたひ候へ
うけ給はり候てたに なくさ(慰)み候へく候 よろつ(万)つ(尽)くし
かたく候てとと(止)め候ぬ 又さいさう(宰相)殿
いまたひめきみ(姫君)にておはしまし候やらん」
(真宗大谷派 東本願寺 真宗聖典 恵信尼消息 便りを 及び
国立国会図書館 電子図書館 「恵信尼文書の研究」わかさとの)
続く。
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