劉淵と司馬頴の会話脚色 743
ところで、「晋書」編纂者は
漢王劉淵の企図・心情をまるで観てきたように記述してます。
これらから編纂者の見解・脚色・偏見が窺えます。
そちらをちょいと検証してみます。
劉宣らの密かな謀議
編纂者の見解は匈奴国再興の企図発端は劉宣らとしています。
しかし、劉宣ら謀議は後先が逆になっています。
晋王朝の内乱情報は中央に留め置かれている劉淵が得やすい事。
五部匈奴地域でを実質束ねる立場の劉淵の叔祖父、劉宣らが
劉淵の意向を確認に触れず大単于とした事。
これらから劉淵が劉宣らに匈奴独立準備を指示していた思われます。
これを否定すると匈奴独立企画は劉宣らの主導になってしまいます。
劉淵と司馬頴との遣り取り
この二人の会話は正に脚色では。
司馬頴に対する劉淵のおべっか・よいしょ・お褒め殺し
まさに、現地のいたかのような実況生中継。
実際、二人が顔を付き合わせて会話をした事さえ不明。
あくまでも事後歴史経過、
1 劉淵が司馬頴の根拠地「鄴」を脱出、故郷「左国城」へ帰還事実。
2 旧東胡(「鮮卑・烏丸」)族の晋軍閥傭兵として軍事能力傑出事実。
3 旧南匈奴(「五部匈奴」)が劉淵を大単于として結集できた事実。
4 司馬頴が「鄴」で司馬騰・王浚軍に敗北、恵帝と洛陽へ敗走事実。
5 劉淵の晋王朝からの独立声明事実。
これらを踏まえてドラマチックに文学作品として仕上げた夢物語。
この編纂者はさしずめ麒麟がくるの脚本「池端俊策」氏もどきのお方。
しかしながら、真実は劉淵と司馬頴のお二人だけの胸の内にしか。
各王朝の正統性を描く「正史」としてこの箇所は如何なものかとも。
しかし、歴史経過事実を歪曲しているわけではありませんので・・・。
*正史
中国、古代から明まで各時代の、もっとも正統と認められた
紀伝体の歴史書。(日本国語大辞典 小学館)
続く。