帝位譲り合い 困窮の海人(あま) 490
大雀命と宇遅能和紀郎子は美しくも互いに帝位を譲り合い。
この状況に困窮を極めた方が
帝に食事材料を納める「海人(あま)」さん。
「兄辞令貢於弟 弟辞令貢於兄」
年上の大雀命は弟の宇遅能和紀郎子に
弟の宇遅能和紀郎子は兄の大雀命に
食糧を届ける様にと互いに海人さんに申しつける始末。
この遣り取りに「経多日(多くの月日が経過)」した様子。
こんな事をしていたら海の幸の生ものは腐ってしまうって云うの。
新鮮なお魚さんは美味しい時に召し上がらないと。
決して、旬 (一番美味しい食べ頃) を逃してはいけませんことよ。
この行為は一度ならず二度(三度)と生じたらしく
海人は両者への行き来に疲労困憊(こんぱい)、泣きが入ります。
それ故、
「海人乎因 己物而泣也(あまなれや おのがものからねなくなり)」
とか云う諺がかの時代にはあったとか。
このお話の古事記展開はいとも簡単にこれでお仕舞い。
「単純明快過ぎて美し過ぎません」 ってな感じ。
又、次なる文言が
宇遅能和紀郎子は早くお亡くなりになり、それ故、
大雀命が天下をお治めになられたと。
要は大雀命(仁徳帝)が帝位を引き継がれたって事。
応神帝がこよなく愛された眉化粧した名宮主矢河枝姫との間の
愛の結晶、宇遅能和紀郎子。
兄たちを諫めてまで帝位を宇遅能和紀郎子に譲った応神帝。
この宇遅能和紀郎子が早世とは。
ちょいとお節介かも知れませんが
この 「早世秘話」 が日本書紀に記述されているのです。
宇遅能和紀郎子が何度も大雀命に帝位を譲る考えを述べても
応神帝の命を守り宇遅能和紀郎子が世継ぎであるとの
意志を翻さない大雀命。
宇遅能和紀郎子はこのままでは倭国リーダ不在、
それより、どうしても兄の大雀命に帝位を譲りたく
自ら命を絶ってしまうのです。
なぜこれまでして彼は帝位を固辞したのか?
きっと以て、わたくしどもには知り得ない深いご事情が有るのでは?
宇遅能和紀郎子の死を知った大雀命は驚き、即、宇治へ赴きます。
彼は号泣しながら亡骸の宇遅能和紀郎子に跨り名前を三度連呼。
すると、不思議なことに宇遅能和紀郎子はかすかに蘇生。
「私の実妹、八田皇女(古事記表記は八田若郎女)の行く末が心配。
是非貴男の后の一人にして下さい。」 と遺言、絶命したとか。
ここでも不可思議なことが。
甦生した事は別として、宇遅能和紀郎子にはもう一人実妹が存在。
素敵なお名前で女鳥王とおっしゃるお方。
なぜ彼女のことは心配ではないのかしらん?
ひょっとしたら女鳥王は八田若郎女より美しかったのかも? 続く。
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