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2014年10月 5日 (日)

大山守命 奈良=平城山に 488

 宇治川の川底に沈んだ大山守命を引き上げるべく
 宇遅能和紀郎子は「鈎=鉤(かぎ)」を以てして川底を探索。
 (鉤は鉄製で先の曲がった形状に木の柄がついている道具。)
 やがて発見、鉤で突いてみると金属製のもの(「甲=鎧」)に当たり
 「訶和羅(かわら)」と「鳴(な)」ったとの事。
 訶和羅は擬音語表現で 「カラン」 って感じかしら
 ここで古事記は寒ーいオヤジギャグが一発。
 故にここを 「訶和羅之前(かわらのさき)」 と云うとか。
 宇遅能和紀郎子は大山守命を引き上げ、一歌。

知波夜比登(ちはやひと)
宇遲能和多理邇(宇治の渡りに)
和多理是邇(渡りぜに)
多弖流(た〈立〉てる)
阿豆佐由美(あずさゆみ〈梓弓〉)
麻由美(まゆみ〈檀=真弓〉)
伊岐良牟登(いき〈伐〉らむと)
許許呂波母閉杼(こころ〈心〉はも〈思〉へど)
伊斗良牟登(いと〈取〉らむと)
許許呂波母閉杼(心は思へど)
母登幣波(もとへ〈本方〉は)
岐美袁淤母比傳(きみ〈君〉をおもひで〈思い出〉)
須惠幣波(すゑへ〈末方〉は)
伊毛袁淤母比傳(いも〈妹〉を思い出)
伊良那祁久(いら〈苛〉なけく)
曾許爾淤母比傳(そこに思い出)
加那志祁久(かな〈悲〉しけく)
許許爾淤母比傳(ここに思い出)
伊岐良受曾久流(い伐らずそく〈来〉る)
阿豆佐由美(梓弓)
麻由美(檀=真弓)

 この歌の展開は
 宇治川の渡場の辺りに立つ梓・檀の木を伐ろうとするが
 (梓・檀は弓の材料になる木)
 その木を見ると「君」や「妹」をついつい思いだし、やりきれず、
 切なくなり、梓・檀の木を伐らずに帰って来てしまったと云う情景。
 この歌って流れに齟齬(そご)をきたしているのでは?
 宇遅能和紀郎子は兄の大山守命の企てを見事に気勢を制止し
 ご自分の手は汚さずとも伏兵に射取らせた筈。
 何を今更って感じがするのですが・・・・・?
 梓・檀の木は大山守命の隠喩。
 「君」 は応神帝を指すと思われますが、
 一方、「妹」 とは一体どちら様を想定されておられるのでしょう?
 妹とはかの時代では心安まる恋人や妻に。
 この 「妹」 が大山守命の奥様になると問題。
  人妻である彼女を好いてしまった宇遅能和紀郎子となると
 この騒動は政治闘争のみではなく怨恨が絡み一挙、複雑化へ。
 古事記原作者はいたくシンプルでぶっきらぼう表現ですので
 心の葛藤はとても読み解き辛いです事。
 大山守命の「骨(=屍)」は「那良(奈良=平城)山」に葬られたとか。
 (平城山の現在地は奈良県奈良市に)
 宇治川の辺に埋葬せず、何故、平城山に?
 ほんと古事記は言葉足らずで困っちゃいます。
 又、大山守命のご子孫は
 土形(ひぢかた)君・幣岐(へき)君・榛原(はりはら)君に。 続く。

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