豊玉姫命の妹、玉依姫命の登場 374
「好き」 な相手に約束を違(たが)えられても相手への
「嫌い」 な感情が上回ない限り 「好き」 な気持ちは継続。
この 「好きな気持ち」 ってとても厄介な代物。
モノに対する 「好き・嫌い」 は何とか解消できるものの
感情を持つ相手には一筋縄では行かないのが世の常。
「好きになってしまった。」 自己感情の否定は自己否定に。
打算無く?相手に好意を持ってしまう
「心の動き」 のメカニズム(仕組み)は解明し難い代物。
又、打算無く相手を好きになるのかも不明・・・・・?
この問題はちょいと取っておく事に。
ところで、
豊玉姫命は火遠理命=山幸彦を嫌いになった訳ではありません。
「見て欲しくない姿態」 を彼に見られてしまっただけなのです。
無思慮な火遠理命=山幸彦はここで無視すると
彼女は単に 「気恥ずかしさ」 により彼との距離を隔てただけ。
恥ずかしく感じ、その空間に存在する事にきまりが悪かっただけ。
故に、この問題を解消する方法は (間髪を入れない)
火遠理命=山幸彦が
豊玉姫命に心を伴った詫びを入れれば終わり。
「(こころからの)ご免なさい。」 で一件落着。
この一言で彼女の 「気恥ずかしさ」 は少しだけ癒され、
旧・元(もと)の鞘に収まるのです。
しかしながら、
ノー天気な火遠理命=山幸彦は 「機微」 を理解できず
「ご免」 をいれない愚か者。
「女らしさ」 と 「男らしさ」 も持ち合わせる
海人 (海を生活の糧にしていた人々)、豊玉姫命
「意地を通し」 続け彼の元には決して帰りません。
只、我が子を彼の元においてきた事がとても気がかり。
そこで、彼女は妹の 「玉依姫」 を派遣し我が子を養育する事に
したのでしょう。
(古事記ではこの事に全く触れていませんが。)
年月が流れても彼への恋慕と我が子への情愛は増すばかり。
そこで、彼女は通い乳母の玉依姫に伝言を委ねます。
そのメッセージは
阿加陀麻波 (あかたまは)
袁佐閇比迦禮杼 (をさへひかれど)
斯良多麻能 (しろたまの)
岐美何余曾比斯 (きみがよそひし)
多布斗久阿理祁理 (たっとくありけり)
そしてこれに対する火遠理命=山幸彦のリスポンスは
意岐都登理 (おきつとり)
加毛度久斯麻邇 (かもつくしまに)
和賀韋泥斯 (わがゐねし)
伊毛波和須禮士 (いもはわすれじ)
余能許登碁登邇 (よのことごとに)
梅原猛さんは次の様に訳されています。
「赤い玉は、
それをそれを貫いている緒さえ光って見えるほど美しいが、
白玉のようなあなたのお姿は、
まことに、いとも貴いものでした」
「沖つ鳥、鴨がいっぱいいる島で、
わたしが一緒に寝たあなたのことは忘れない。
わたしが生きている限りは」
(「神々の流竄」 梅原猛著作集8 集英社 p430)
上の訳ですと、お二人の縒(よ)りは決して戻らないのでは。
この展開なら豊玉姫の未だに恋い焦がれる状況設定は不必要。
お二人ともに新たな恋を求めれば一件落着の筈。
何か狐につままれた感じで合点が行かない感じ・・・・・。 続く。
| 固定リンク
コメント