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2009年3月15日 (日)

ナウイ肌感覚の自然歴 213

 自然の佇 (たたず) まいを、時を刻む事で表現した旧暦。
 昼間はお仕事、夜は憩い。
 憩いの一時、ふと空を見上げるとそこには 「月」 が。
 「クラブー」 も 「赤提灯」 も
 「ゲェーム」 も 「パチンコ」 も
 「ネット遊戯」 も 「お仕着せテレビ」 も
 「ケータイ」 も 「黒電話」 も
 「シコシコ自分時間」 も 「いやいや他人時間」 も
 なーんにもない、大らかで悠久な時空の旧暦時代の月は
 暦の日付通りにお目見えしていました。
 三日月、かみのゆみはり (上の弓張)=上弦の月
 十日夜、十三夜、十五夜、十六夜 (いざよい)、
 立ち待ち月(十七夜)、居待ち月(十八夜)、臥し待ち月(十九夜)、
 更け待ち月(二十夜)、しものゆみはり (下の弓張)=下弦の月
 二十三夜、有明の月。
 又、夕方から朝方だけとは限りません。昼間にも月様、月が。
 江戸時代初期に造られた日本文化と思想を具現化した「桂離宮」。
 この桂離宮には月を愛でる為、
 中書院の 「月見台」、茶室の 「月波楼」 が存在します。
 尚、そちらは 「宮内庁ホームページ 桂離宮」 でご覧下さい。
 更に、自然の趣は天体現象のみに留まりません。
 この地球の大地に生きとし生けるもの、それらの移り変わりの妙。
 彼女・彼らの息吹を感じられる時空間。
 「そんな時空は何処へやら」 と決して思わないで下さいませ。
 今語っています粋なお江戸時代でさえ
 自然な時の流れ (もののあわれ) をよくよく感じる様促した方が
 おられました。そのお方は、
 伊勢国松阪生まれ、木綿問屋の次男坊、
 本居宣長 (1730~1801)。
 彼の53歳時の著書、真暦考<天明2年 (1782年)>で
 下記の様に記しています。
 「そのをりをりの物のうえを見聞て知れりしこと、
  春のはじめと同じくて、
  天 (そら) のけしき、
  日の出入かた、
  月の光の清さにぶさなどに考へ、
  あるは木草の上を見て、
  此木の花さくは、
  その季 (とき) のそのころ、
  その木の実なるは、
  そのときのそのほど、
  この草の生 (おい) 出るは、いつのこのごろ、
  その草の枯るゝは、いつのいつほどとしり、
  あるは田なつ物畠 (はな) つものにつきても、
  稲のかりどきになるはそのほど、
  麦の穂のあからむはそのころ、というごとくこころえ、
  あるは鳥のとこよにゆきかへるを見、
  虫の穴にかくれ出るをうかゞひなど、
  すべて天地 (あめつち) のうらに、をりをりにしたがいて、
  うつりかはる物によりてなむ、
  某季 (そのとき) のいちほどとさだめたりぬる。・・・・・
  後の世には暦といふ物ありて、月日のさだめみなゆだねおく故に、
  天地の間の物のうへを見聞て、考へむ物ともせず、常に心をつけざ
  れば、見ても見しることなし、されば今の人などの心には上件 (か
  みのくだり) のごとくして定めむをば、おぼつかなきことと思ふべれ
  ど、いにしへこよみなかりし代には、かならず然 (しか) して定むる
  ならひなりしかば、人みなよく見しり聞しりて違ふことなかりきかし、
  すべて何わざも、心をつけてつね馴ぬることと、心もつけずなれざ
  ることとは、思ひのほかに、ことなきかはりあるものなり・・・・・。」
  (暦と日本人 内田正男著 雄山閣出版 p175)
 本居宣長は 「暦」 のお陰で自然の移ろいを感じなくなったと
 世を嘆いておられます。
 何時の世も感じる心が無い方は感じる事ができ得ないのは当然。
 なにも 「暦」 のせいにしなくても・・・。
 何かの 「せい」 にする事はいとも簡単、逃げ口上。
 頭隠して尻隠さず?
 そこには貴女・貴男・「私」 が生きているのです。
 お江戸の暦情報なんて今の平成何のその、
 H.M、○九、アキバ、コンビニ、ケータイ等々の如きに
 私の心は奪われっぱなし・・・・・???
 わたくし達の 「肌感覚」 と 「純な心」 は何処へやらっと。
 ってな感じで暦についてはこれ位に。
 江戸時代に天文・暦についての詳しい事は
 国立天文台図書室 貴重資料でご覧頂けますので是非。
 次回は、道教の自然神 (心) に戻ります。           続く。

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