江戸暦 貞享・宝暦・寛政・天保暦 211
今日は三月一日。昨日は二月二十八日。
2009年は4で割り切れない年故に、閏日の2/29はありません。
2012年のロンドンオリンピックまで閏日はお休み。
ひと月が28日或いは29日になるのは2月のみ。
旧暦はひと月、29日 (小の月) か30日 (大の月) のどちらか。
いにしえより暦情報発信元は京都朝廷陰陽寮を代々世襲していた
土御門家 (安倍晴明の末裔の方々) が牛耳っていました。
しかしながら、
1684年 (貞享元年) に渋川春海 (しぶかわしゅんかい) が
江戸幕府天文方 (てんもんかた) に就任してからは天文方が
暦を管理、暦日、日月食の日取りを計算する事に。(貞享暦)
従いまして、その後は天文方が翌年の小の月、大の月の順序等
(月の満ち欠けの時間、日月食を一年分緻密に算盤で算出)
を調べ暦業者に通達する事がお仕事。
<一時 (1754~1797年)、
土御門泰邦 (1711~1784) が暦作製権限を奪い返します。
基本的に世襲家柄ですので、時を置かず日食予想日を誤る失態、
(宝暦歴) 馬脚を露呈する事に。
やがて天才と云われた高橋至時 (よしとき) (1764~1804) が
天文方になり江戸幕府側が再奪還。(寛政歴)>
そのお知らせが、約晩秋発表ですので暦株仲間さん達は大変。
10月の末から11月の初めくらい迄に
皆様のお手元に届かないと翌年のお日取りが分かりません。
巻物暦の具注歴 (京都朝廷関係者用)<書写暦>、
摺り暦の伊勢暦 <版暦>、
<この伊勢暦は 「伊勢神社」 のお札 (ふだ) のおまけで賦暦>
一般販売用の暦 <綴り暦(小雑誌風)> は暦株仲間さん達が
販売先毎に装丁したり、ボリューム版なら一枚刷りにします。
世の皆さんもこの暦が作製されないと
翌年のイベント段取りが取れない事になってしまいます。
しかしながら、
京都朝廷・江戸幕府・各藩官僚・神社仏閣関係者等の方々
に取っては絶対に欠かせない 「暦」 ですが
お百姓さん・熊さん・八つぁん達にとってはそれ程でも???
三日月の日は 「3日」、十五夜の日は 「15日」、雨が降ったら
何処かの日から指を数えて感じで十分でした。
更に、又、
江戸幕府、各藩、朝廷の官僚さん達、は年俸ですし、
掛け買い可のお支払い先には年払いですし、
殊更一ヶ月単位を気にせずとも全く問題はありませんでした。
何時もニコニコ現金払いの場合は
「宵越しの金はもたねーわい」 ってな感じ。
時代が下り、天文方は高橋至時の次男、
渋川景佑 (1787~1856)が天保暦 (1842年) を作るに至り、
お隣、中国の太陽太陰暦を
精度において越えたと云われています。
<至時の長男は
シーボルト事件で名高い高橋景保(1785~1829)>
時刻と十二支の陰陽説の最後に記した
気の利いた天文方のお役人さんはとっても粋な渋川景佑でした。
天保暦に巷での常識、何と不定時制を掲載してくれたのです。
庶民に取って日常となっている 「時の感覚」 を官報暦に記載。
今時の個の私腹を肥やす 「渡り元官僚」 とはひと味違います。
不定時制は季節でいっとき (一時) の時間が異なる時制。
鐘の音 (ね) で時刻を認識する方法。(時鐘式)
太陽暦採用後は時刻を何時何分何秒と表現していますが、
この旧暦時代は 「いまなんどき (何時)」 と。
これって、以前流行った?
「スローライフ」 そのものとお思いになりません?
天文方のもう一つの大事なお仕事、日月食の日取り計算。
日食は朔日 (一日)、月食は望月 (十五日) に起きる可能性が。
特に日食 (日蝕) は昼間に起きる現象ですから晴れている限り
必ず目視可能です。
(地球は丸いので日本の夜間にも日食は当然起きます。)
故に天文方の方々にとって日食 (日蝕) 日の予想はたいへん。
上に書きました様に宝暦歴はそれで改暦の憂き目。
又、この江戸時代どの様であったか不明ですが、
平安時代でしたら日食 (日蝕) 日、朝廷官僚は休日でした。
(日蝕廃務)
お日様が蝕まれるのですから 「凶日」 で厄日でした。
それに当たる日には、
朝から御簾を降ろしお坊さんらに読経をして頂くのがお決まり。
但し、この時代の陰陽寮のお役人はとってもラッキー。
なぜなら、予想の計算違いがあり日食 (日蝕) が無い場合は、
読経のお陰 (お坊さんらがラッキー) と逃げられますし、
吝か当たった場合は陰陽寮のお役人達は評価されるのですもの。
ここの所が当たるも八卦当たらぬも八卦の由縁???
時が一気に下り現在では殆ど正確に日月食日が予測可能。
たまたまラッキーな事に、
今年の7月22日、晴天であれば、日本で日食を見られます。
種子島・屋久島・奄美大島近辺の島々では 「皆既日食」 が。
詳しい事は、「国立天文台 7月22日の皆既日食」 でご覧下さい。
続く。
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