みやびと服(顔料と染料) 五
今回も困ったお話です。
「絵の色」 と 「平安衣装の色」 との違いです。
三で語りましたように、「絵」 は顔料での着色です。
「絹の布」 は染料で染められています。
又、色づけが 「絵」 は紙の上に、「衣装」 は布の上です。
おの(自)ずと同色にはなりえません。
がい(概)して、顔料と染料を比べれば、
鮮やかさ(彩度)と明るさ(明度)において、
染料は顔料に劣ります。
「劣る」 は優劣の劣ではなく、表現のしにくさです。
布はとても発色性が悪いのです。
それでも絹の布は麻・綿の布と比べ
格段と発色性は富んでいます。
今現在においても、この問題はついて回っています。
私たちの仕事に立ち入りますが、
服を作製する際、基本的に
ファッションデザイナーを職となさっておられる方は、
まずデザイン画を作製されます。
中にはそのデザイン画に着色されて表現なさる方もおられます。
おおむ(概)ねファッションデザイナーさんは、「我がまま(儘)」 です。
そうでないと 「やってられない」 のが実状なのかも知れませんが。
そこでです。
布を決定して色づけの作業の段階で、たちまちトラブル発生です。
生地やさんは、デザイナーさんの 「デザイン画」 と 「言葉」 を
斟酌(しんしゃく)して、
今日この頃のような蒸し暑い染め場で色出しをして下さいます。
(業界ではビーカー出しと言います。)
一色につき、二点から三点程のビーカーをお作り下さいます。
それを見て、
かのデザイナーさんは
「このデザイン画の色と同色かビーカー色との
中間にしてちょうだい(頂戴)。」
とだだ(駄々)をこねるのです。
優れた化学染料がある今時でも 「これなんです」 もの。
トホホっと。
(決して当社のデザイナーではございません。) 次回へ。
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